"rouge"は「口紅」の意であり、キュートでセクシーな女性を象徴。
"non"を付けることで、「素顔の」「本音の」という気持ちを込めました。

「お魚くわえた、ドラ猫 猫が魚を好きなのは、古今東西、当たり前のことなのかもしれない。その当たり前のことに独自の視点で向き合い、解釈を加え、そして、ひとつのストーリーとして描き出したのが、絵本作家のひだのかな代さんだ。
  ひだのさんが紡ぎ出したのは、病気に冒された猫を助け出すため、仲良しだった魚が命を投げうって猫のお腹に中に入り込み、病巣を退治。元気を取り戻した猫はそれをきっかけに魚を食べるようになったという物語であり、この『ねこがさかなをすきになったわけ』で2004年、新風舎が主催する「第8回新風舎絵本コンテスト」で大賞を受賞。絵本作家としてデビューを果たした。
  絵本作家といっても、若い時分から本格的に絵を勉強したわけでも、作家を目指した活動を続きてきたわけではなかった。絵を描くことを生業にしたのは、39歳の時。1999年に「自称・イラストレーター」でスタートし、それから5年後の44歳で絵本作家としてのデビューをつかみ取った。デビューまで遅咲きの作家が辿ってきた道のりは、まさに「裏街道」と言ってもはばからないだろう。

 ひだのさんは1960年、宮城県仙台市に生まれた。父親の転勤で札幌にやって来たのは10歳の時。以来、札幌で過ごしている。
 子どもの頃からスケッチブックを抱えて出かける性質で、当時は「絵本作家」になることを漠然と夢見ていたという。ところが中学時代、教師に言われた「絵の才能がない」という言葉をきっかけに意気消沈。その後はとりわけ絵筆を取ることもなく、なんとなく絵を描くのが好き、という程度の少女期を過ごしたという。
 そんな彼女の中で何かが変わったのは、札幌大谷短期大学保育科に在学中のことだった。卒業制作として絵本の作成を手掛ける機会があり、その作品を目にしたクリエーターから「いっしょに仕事をしたい」という話をもちかけられたのだ。
 その話しにすっかり有頂天になり、絵の道を仕事にしようと思った彼女ではあったが、世の中、そんなに甘くはない。結局、具体的な仕事の話に進展することはなく、これを機に人間不信に陥った彼女は、またしても筆を取らなくなってしまったのだ。
 大学卒業後、数々の仕事を転々。32歳の時には結婚もした。女性としてそれなりの人生を重ねる中で、心の奥にふつふつと絵を描くことへの思いがあることを感じていた。そこで翌年、不惑を迎えるというある時、半ば冗談で人生をタロットカードで占ってもらったのだ。すると、次に何かをしようとした時に大成功をする、というカードが出てしまったのだ。
  裏付けは何もなかった。ただ、人生最後のチャンスをそのカードに託してもいいのかな、という軽い思いで翌月にはその時勤めていた花屋さんを退社。「自称・イラストレーター」としてスタートしたのだ。
 タロットカードの占いは、彼女にとって「吉」と出た。創刊を控えた「花新聞ほっかいどう」で花に対しての専門知識のあるイラストレーターを探していたところであり、花屋さんに5年も勤めたひだのさんは、まさにうってつけの存在。渡りに舟とばかりに白羽の矢が立ったのだ。わずか2ヶ月で「自称」の肩書きは外れてしまった。
「花新聞ほっかいどう」のレギュラーをきっかけにイラストレーター・ひだのかな代としての活動は広がり、その一方で、絵本作家としての道も模索し始める。作品を描いては、出版社で主催するコンテストに応募。こうした活動を続ける中、ついに2004年、『ねこがさかなをすきになったわけ』が新風舎の目に止まったのだ。

 


 2006年には2作目となる『りんごりんごろりんごろりん』を出版。全国の図書館にも児童図書として置かれたほか、韓国での翻訳版も出版された。ところが、さらなるステージを目指して、創作活動を続ける昨年、突如、彼女に病魔が襲い掛かる。たまたま受けた検診で子宮にガンが見つかったのだ。2度の手術を経て2008年1月に退院。すると今度は、2冊の作品の版元だった新風舎が2月に倒産してしまったのだ。
「ガンを告知された時、真っ先に『このままでは終われない』と思いました。楽天家のタイプなのですが、この時ばかりは『生きるとは何か』なんて、らしくないこと、考え込んじゃいました。この世に生まれ落ちた以上、何かを残したい。その何かというのが私にとって絵本なんだなって。もっと描かなければならないと思いました。すべてが振り出しに戻ってしまったけど、今は一から頑張っているところです」
  くよくよ考えていても仕方がない。何もせずに待っていても仕方がない。絵本作家としての新しい道筋を模索しながら、次ぎなる発表の場を信じて、作品を紡ぎ出している。

絵本作家 ひだの かな代さん

札幌を拠点に活躍中の絵本作家・イラストレーター。1960年仙台市生まれ。1999年、「花新聞ほっかいどう」(道新スポーツ)でイラストレーターとして活動を開始する傍ら、絵本作家としても創作活動に入り、2004年に『ねこがさかなをすきになったわけ』(新風舎)で作家としてデビューを果たす。2006年には2作目となるとなる『りんごりんごろりんごろりん』を発表した。