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れいになる」とはいったいどんなことなのか。多くの患者さんに日々接するなかで、私たちは「理想」と「現実」を行ったり来たりしながら、常にその答えを模索しています。ここで言う「理想」というのはもちろん患者さんの希望であり、それがどんなものなのかを把握し、最終的にどういう施術を行い、どんな形に落ち着くのかが「現実」ということになります。
私が美容形成外科医としてもっとも大切にしているのが、この「現実」にいたるまでの過程であり、つまりそれが初診の際のカウンセリングになります。カウンセリングで患者さんとどれだけ信頼関係を築き上げることができるのか。ここにある意味、美容形成の根本があると考えています。私がカウンセリングを重用視するには理由があります。例えば、「目を二重にする」「鼻を高くする」「鼻筋を通す」「シワを取る」など、施術を言葉で表すのは簡単ですが、患者さんの顔、骨格は十人十色。人の数だけ施術方法も異なり、アプローチの仕方も変わってきます。
カウンセリングによってまず私が知りたいのは、患者さんがどんな「美」を求めているかということです。「この部分をこうしてほしい!」というように明確な目的を持っていらっしゃる方もいますが、逆に言い出したいけど言えない、という患者さんも中にはいらっしゃいます。けれど、どちらにも共通しているのは、心の奥に「きれいになりたい」という熱い思いがあることです。
患者さんが施術の中身を知りたいのと同じように、私も患者さんのことを知りたいのです。初対面で、しかも10分程度のカウンセリングでは、充分に互いを理解できるわけなどありません。患者さんの心を解きほぐし、そして、その思いを汲み取りたいからこそ、時間をかけて話しをうかがうことにしています。
の医師としてキャリアは、脳外科医からスタートしています。脳外科医を5年勤めた後、それから形成外科へ移り、そして、現在は美容外科医として働いています。
同じ医者とはいえ、脳外科医と美容形成外科医とでは医師としての役割も多少異なるのかもしれません。前者の診療とは疾患などの治療がメイン。つまり、マイナスのものをプラスに転換することです。それに対し、後者の治療とは病気やケガを治すのではなく、患者さんの現状にプラスアルファのエッセンスを与えること。前者は「キュア」(CURE)で、後者は「ケア」(CARE)の要素が高いと言えます。社会的な部分での役割は確かに違うのかもしれません。ただ、脳外科医時代から現在まで、私の医師としてのスタンスにまったく変わりはありません。一貫しているのは、とにもかくにも、患者さんを「救いたい」という気持ちです。美容外科医というのは直接的な意味で命を救いません。けれど、患者さんの心を救うことができます。人は誰もが美しくありたいと願っています。と同時に多かれ少なかれ、コンプレックスを抱いているものです。そのコンプレックスを取り除き、そのことで明るい未来を手に入れることができるのなら、それは美容外科医としてとても幸せなことなのです。美容外科医の仕事は、新しい人生の原動力、つまり「命の泉」を与えるものだと思います。
私には美容外科医としての理想があります。誤解をおそれずに言うなら、目指しているのは「頑固おやじのラーメン屋」みたいなクリニックです。「頑固」というのは、何も患者さんの話を一方的に聞かないということではありません。自分がこうだと思う施術を患者さんに押し付けるわけではありません。個人のクリニックだからできる、最高の治療を提供したいということです。「最高の治療」というのは、技術的な部分はもちろんですが、それ以外の多くのことが含まれます。施術後の患者さんの人生を背負う部分も少なからずあるわけですし、だかれこそ、その施術が患者さんにとって良いものか、悪いものかを冷静に判断しなければなりません。「最高の治療」には、時として立ち止まる勇気もまた必要なのだと考えています。
患者さんには様々な方がいらっしゃいます。時に、母親を連れ添った年頃のお嬢さんがいらっしゃることも珍しくありません。その年代ならではの悩みを抱えて病院に駆け込んで来るというのが大半で、コンプレックスを抱えた娘の要求に母親もお手上げ状態という場合が多いです。母親にしてみれば、お医者さんから専門的な話しを聞くことで娘をどこか落ち着かせるという狙いもあるのでしょうが、それに対して娘さんの方は表情も険しく、すぐにでもコンプレックスを払拭しようと必死に施術を迫ります。
患者さんの要望を一方的に聞き入れ、施術を行うのは簡単です。ただし、そうすることは必ずしも患者さんのためなるとは限りません。大切なのは、どんなに些細なことであっても患者さんが望んでいることに真摯に耳を傾け、その上で施術が適切なのかどうかということを判断するのです。成長期にある女の子であれば、施術を1、2年遅らせた方がいいという場合もあります。メスを入れる行為ですから、もちろんそこにはメリットもあれば、デメリットもあります。施術から、10年後、20年後を見据えてアドバイスし、それを理解した上で最善の選択肢を患者さんといっしょに探して行くこと。それが医師として最も心掛けていることです。
施術前とは明らかに違うオーラをまとった患者さんを発見した時こそが、この仕事をしていて最も良かったと感じる、至福の瞬間です。
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